乳酸とは?運動や筋肉との関係

乳酸とは?運動や筋肉との関係

乳酸はなぜ運動で増えるのか?筋肉内で起こる乳酸生成とエネルギー代謝の仕組みを、運動生理学に基づいて解説。トレーニングやパフォーマンス理解に役立つ基礎知識を紹介。

強い運動で筋肉にたまる「乳酸」


例えば、腕立て伏せを何回も続けて行ったときのことを思い出してみてください。
最初のうちは余裕をもってできていたのに、回数を重ねるにつれて腕や胸の筋肉がだんだんと熱くなり、重だるく感じてきます。
そして最後には「もうこれ以上は無理だ〜」と感じてしまいますね。


100m走を全力で走った後に、太ももがパンパンに張ってしまい、歩くのもつらくなるような経験をしたことがある人も多いでしょう。
短い時間の運動でも、全力や全力に近い強さで体を動かすと、筋肉は急激に疲れてしまいます。


このように、運動中や運動の直後に筋肉が強く疲れる現象の原因の一つとして知られているのが「乳酸」です。
運動をすると筋肉の中に乳酸が増え、筋肉細胞内の環境が酸性に傾く(pHが下がる)と考えられてきました。
すると筋肉がうまく収縮できなくなり、思うように力を出せなくなるのです。


ところで・・・
「乳酸は疲労物質ではない」
「酸性になるのは乳酸が原因ではない」
という考えが現在ではメジャーです。
しかし、これらの考えはやや言い過ぎであり、乳酸の蓄積は疲労(筋肉痛ではなく、上記のような一時的な疲労)の原因の一つである可能性は必ずしも否定できないと私は考えています。
このことについては、改めて記事にしたいと思いますが、ここでは一旦、「乳酸の蓄積は疲労につながる」という考えの元で解説していきます!


ちなみに、「乳酸はエネルギー源」というのは、そのとおりだと考えています。


炭水化物や脂肪を酸素で燃やし、筋肉が動く

では、この乳酸はどのようにして体の中で作られるのでしょうか?


この仕組みを理解することはとても重要です。
乳酸がどのように発生するのかを知ることで、運動中に苦しくなる理由やスタミナ切れの原因が見えてきます。
そして、それは試合でより良いパフォーマンスを発揮するためのヒントにもつながります。


どんな競技でも、スポーツはすべて筋肉の働きによって行われていますね。
そして、筋肉を動かすためにはエネルギーが必要です。
このエネルギーのもとになるのが、私たちが食事から摂取している栄養です。


特に重要なのが「炭水化物(糖質)」と「脂肪(脂質)」です。


食事を消化吸収し、この二つの栄養を筋肉の細胞内に取り込み、酸素と一緒に分解することで筋肉を動かすためのエネルギーを作り出します。


人間の体を自動車に例えてみましょう。
筋肉はエンジンにあたります。
そして、炭水化物や脂肪はガソリンのような燃料です。
ハイブリッドカーではないですが、炭水化物と脂肪という2種類の燃料を使い分けています。


エンジンである筋肉が、燃料である糖質や脂質を使い、呼吸で取り込んだ酸素を消費しながらエネルギーを生み出し、その力で体を動かしているのです。
よく「運動すると脂肪が燃える」と言われますが、これはまさにこの仕組みを表した言葉です。
糖質脂質の燃焼


「燃やす」といっても、筋肉の中で炎を上げて燃えているわけではないですよ!
ちょっと体温が上がる程度です(熱が発生するという意味では同じですね・・・)。
ただ、酸素を使って分解(酸化)し、エネルギーを発生させているという意味で「燃える」というイメージは近いと思います!


炭水化物は乳酸を発生させる

ただし、この二つの燃料はいつも同じ割合で使われているわけではありません。
「運動の強さ」によって、この2つの使われる割合が変わります。


この割合は、運動中の呼吸を分析することで科学的に調べることができます。
研究の結果、運動の強さが高くなるほど、脂質よりも糖質が多く使われるようになることが分かっています。


糖質脂質の割合
(Astrnd  et  al,  1970から作図)


ここで、乳酸と関係する大事なポイントがあります。


糖質はエネルギーとして使われるとき、その過程で乳酸を発生させます。
しかし、脂質はエネルギーとして使われても乳酸を発生させません!


上のグラフから分かるように、運動強度が高くなるほど糖質が多く使われるようになりますが、
その結果、筋肉で発生する乳酸の量も増えていくのです。
これが、全力運動をすると筋肉が急激に疲れやすくなる理由の一つです。


乳酸の発生


脂肪を上手く使って乳酸をためない身体にする

では、運動中に発生する乳酸をできるだけ少なくするには、どうすればよいのでしょうか。


一つは運動の強度を下げて(ゆっくり走るなど)、脂質を使う割合を増やし、乳酸の発生を減らすことです。
しかし、これでは競技的にはダメですよね?


もう一つの解決策としては、乳酸を出す糖質に頼るのではなく、乳酸を出さない脂質をより多く使ってエネルギーを作れる体になることです。
脂質をうまく利用できるように体をトレーニングしていくということです。


特に、試合時間が3分から5分以上続く競技では、このようなトレーニングを続けていくことがスタミナを高めるうえで役立つと考えられています。
脂質をエネルギーとして使える能力が高いほど、乳酸の発生を抑えながら長く動き続けることができるからです。


つまり、比較的長い時間続く競技では、「脂質をうまく使える体を作ること」がパフォーマンスアップの重要なポイントになります。


長時間競技でのトレーニングのポイントはこちらで解説してます⇒長距離種目のトレーニング


ただし、競技時間がそれよりも短い場合には、事情が少し変わってきます。
短時間で勝負が決まる競技では、単に脂質を使えるようにするだけでは十分とは言えません。
別の視点からのトレーニングも重要になってくるのです。


短時間競技でのポイントはこちらで解説しています⇒短距離種目のトレーニング