では、バケツ理論によって乳酸という面から持久系スポーツのトレーニングのアプローチを考えて見ましょう。
まず長距離走などで一番大事なことは、乳酸発生の元となる糖質をできるだけ使わないで脂肪を燃焼させる体質になることです。 バケツ理論で言うと、水道の蛇口の大きさを小さくして、バケツに水がたまらないようにすることです。 前ページで述べたLSDがそのトレーニングにあたります。
次に大切なのは、バケツにたまった水を速やかに抜く、つまりバケツの底の穴を大きくすることです。 これは、乳酸の酸化能力を高めることを意味します。
理想的なのは、水道から流れる水の量と、バケツの底から抜ける水の量が同じになることです。 マラソンで集団の流れについていっているときにこの状態が実現できれば、疲労を感じることなく走ることができます。
スパートをかけて集団から抜け出るときなどは、どうしても糖質を使う、つまり水道の勢いが強くなりますから、乳酸濃度が高くなります。 ですが、その後ペースが落ち着いて、再び一定のペースで走り出すとき、バケツの底穴が大きい人は、バケツにたまった水を速やかに抜くことができるのです。
バケツの大きさを大きくして乳酸に耐える能力を養う、耐乳酸トレーニングは長距離ランナーにとっても多少は必要です。 しかし、基本的に耐乳酸能力は筋肉量の多さと関係しますので、耐乳酸トレーニングを行いすぎると体重が重くなり、長距離種目では不利に働きます。