運動中、筋肉は糖質を解糖系代謝で分解して乳酸をつくり、さらに乳酸を酸化系代謝で酸化して、運動のためのエネルギーを生み出します。
このプロセスは、「バケツに水を貯める」ということをイメージするとものすごく理解しやすくなります。
下の図を見てください。
水道から水を出し、バケツに水をためています。
バケツの底には穴が開いていて、そこから水が流れて出ているという状態です。
このとき、水道からの水の流れは「解糖系代謝の強さ」を表し、バケツにたまっている水の量が「筋肉に蓄積している乳酸の量」を意味しています。
解糖系代謝が強ければ強いほど、そこから生み出される運動エネルギーは多いのですが、乳酸が大量に発生しやすくなります。
バケツの水がいっぱいになってあふれると、筋肉が乳酸でパンパンになっているという状態を表しています。
バケツの底穴から流れる水の勢いは「酸化系代謝の強さ」を表しています。
底穴が大きいほど、バケツから勢いよく水が流れ、乳酸の酸化によって生み出させるエネルギーが大きくなります。
また、バケツにたまった水が減りやすく、乳酸の蓄積が抑えられます。
このことから分かるのは、筋肉への乳酸の蓄積は「解糖系」と「酸化系」の強さのバランスによって決まるということです。
そして、前のページで述べたように、解糖系は短時間でエネルギーを生み出せるため、短距離系の無酸素運動で重要で、解糖系が発達していなければなりません。
一方、酸化系は乳酸を分解してエネルギーを生み出すため、長距離系の有酸素運動で重要です。
短距離系では、できるだけ多くのパワーを出力するため、水道の水の勢いが強くなければなりません。
一方、長距離系では水道の勢いはそれほどでもないものの、バケツの穴をできるだけ大きくして、バケツに水がたまらない状態を長時間キープしなければなりません。
それでは乳酸で筋肉をオールアウトさせない、つまりバケツの水をあふれさせないためにはどのような方法があるのか、次に考えましょう。