


格闘技での持久力を上げたいと思ったとき、まず思い浮かぶのはランニングではないでしょうか?
ロードワークを増やす、長い距離を走る、心肺機能を鍛える・・・これは昔から定番の方法です。
ここでちょっと考えてみてください。
試合中の動きは、一定ペースで走り続ける運動でしょうか?
実際の格闘技は、
一気に攻める → 組む →止まる → また一気に動く、
というように、強い動きと短い休息が何度も繰り返されます。
むしろインターバルトレーニングの内容に近いはずです。
では、格闘技向けの持久力を高めるために、わざわざ走る必要はあるのでしょうか?
格闘技の動きって、走動作は限られてますよね。
競技動作そのものを使ったインターバルトレーニングのほうが合理的なのではないか?という疑問がわきませんか?
そこで、このスポーツ科学論文です!
Effects of high-intensity interval training on aerobic and anaerobic capacity in olympic combat sports: a systematic review and meta-analysis
(高強度インターバルトレーニングがオリンピック格闘技における有酸素運動能力と無酸素運動能力に及ぼす影響)
Fengshan Yue, Yuyan Wang, He Yang, Xiaolei Zhang
Frontiers in Physiology, 2025
柔道・レスリング・テコンドーといったオリンピック競技になっている格闘技選手を対象とした研究をもとに、
インターバルトレーニングが持久力やパワーにどのような影響を与えるのか、
そして「走るトレーニング」と「競技動作トレーニング」の違いは何か、
競技に必要なスタミナをアップさせるには何をやるのが正解なのか?を、科学的に追求したメタ解析論文です。
それでは、ゆっくりとご覧ください!
高強度インターバルトレーニングは、格闘技選手において有酸素能力(最大酸素摂取量)と無酸素能力(ピーク・平均パワー)を有意に向上させる。
この論文では「HIIT(高強度インターバルトレーニング)が格闘技選手の体力を本当に高めるのか」を、複数の研究をまとめて検証しています。
対象は柔道やボクシング、テコンドーなどの選手で、全部で20研究、約400人です。
トレーニング期間は4?12週間くらいで、週2?4回くらいのHIITが行われています。
まず一番重要な結果は、有酸素能力です。
多くの研究で、トレーニング後にVO?maxが上がっています。
そして、それを全部まとめて統計的に処理すると、「持久力が中程度の効果で明確に向上している」と言えます。
これは単なる傾向ではなく、統計的にも有意です。
つまり、「たまたま上がった可能性は低い」と判断されています。
次に無酸素能力です。
ピークパワー、つまり一発の最大出力は、
全体としては上がっているけれど、その伸びはそこまで大きくありません。
ただし、「小さいけど確実に効果はある」という結果です。
一方で、平均パワー、つまり繰り返し出力する能力は、
こちらは中程度の効果でしっかり伸びています。
ここで重要なのは、「競技特異性」です。
この論文では、
この2つのトレーニング形態も比較しています。
そして結果としては、どちらでも同じように効果が出ています。
つまり、「方法に依存せず効果がある」というのがポイントです。
道場やジムでの格闘技の練習の中でインターバル的に追い込めば、持久力アップやパワーアップにつながるということです!
ただし、すべての研究が同じ結果ではありません。
中には、HIITと通常トレーニングで差が出なかった研究もあります。
また、トレーニング期間によって効果が変わることも示されています。
例えばピークパワーは、4週間では有意差が出ず、6週間以上で有意差が出ています。
了解です。論文に記載されている内容のみを使って、文字起こし風に書き直します。
この論文は、格闘技選手へのHIITの効果自体は認めています。
ですが、同時にかなり慎重な立場も取っています。
というのも、「この結果をどこまで信じていいのか」という点に、はっきり限界があるからです。
まず一番大きい問題は、トレーニングの中身がバラバラなことです。
同じHIITといっても、ある研究では短い全力走を繰り返していたり、別の研究では競技動作を使っていたりします。
さらに、運動時間も休息時間も、強度も統一されていません。
なので、「HIITが効く」「インターバルランもインターベル競技動作も効果あり」言えても、「どんなHIITがベストか?」は、この論文からは全く分からない状態です。
次に、研究のやり方そのものにも若干問題があります。
多くの研究で、被験者も評価者も「どっちのトレーニングをやっているか」を知った状態で実験しています。
これはトレーニング研究ではよくあることなんですが、本来はあまり望ましくありません。
なぜかというと、例えば「きついトレーニングをやっている」と思えば、
それだけで頑張り方が変わったり、測定結果に影響が出る可能性があるからです。
それから、「なぜ効果が出たのか」がよく分からないという問題もあります。
この論文では、VO?maxやパワーは測っていますが、
筋肉の中で何が起きているかとか、神経系がどう変わったかとか、そういうメカニズムまではほとんど触れられていません。
なので、「結果は出ているけど、理由ははっきりしない」という状態です。
あと、単純にデータの量が少ないです。
全部合わせても400人未満で、しかも1つ1つの研究はさらに小規模です。
こうなると、たまたま出た結果が混ざっている可能性も否定できません。
実際、この論文でも「不精確」と評価されています。
さらに、研究ごとの結果のバラつきもかなり大きいです。
ある研究では大きな効果が出ているのに、別の研究ではほとんど差がない、というような状況です。
統計的にもそのバラつきは大きいと評価されています。
つまり、「どの条件でも安定して効果が出る」とは言い切れないということです。
最後に、この論文が一番強く言っているのはここです。
「エビデンスの確実性は非常に低い」、つまり「効果がある可能性は高いけど、その確信度は高くない」という立場です。
この点を無視して、「HIITは絶対に効く」と断言してしまうのは、ちょっと言い過ぎというのは否めません。