


ロードバイクでスプリント力向上のために筋力トレーニングを行っていますか?
最近は、高負荷・低ケイデンスで上り坂を数分〜5分間程度走る「SFRトレーニング」には実際のところ筋力アップ効果はあまりない、と言われており、
むしろペダリング矯正の効果があるのではないかと考えられています。
基本的に、筋力アップはバーベルスクワットなどで5回〜10回程度しかできない程度の高負荷の筋トレが効果的です。
SFRでは筋力アップに必要な負荷が不足していると考えられています。
では、ロードバイク上で筋力アップ、スプリント力アップできるトレーニングはできないのでしょうか?
ペダリングに必要な筋力はペダリングで鍛えられないのでしょうか?
その点について科学的に検討したのがこの論文です。
Off- and On-Bike Resistance Training in Cyclists: A Randomized Controlled Trial
David Barranco-Gil et al., Med Sci Sports Exerc, 2025.
それでは早速解説していきます!
高負荷・低ケイデンスの「ロードバイクでの筋力トレーニング」は、従来のスクワット中心の筋トレとほぼ同等に、サイクリストの筋力・スプリント能力・筋量を向上させた。
この論文が面白いのは、「自転車上での筋トレは、本当に筋トレになるのか?」をかなり真面目に検証したところです。
ロード界隈では昔から、「重いギアを低ケイデンスで踏めば脚力がつく」という考え方があります。いわゆるSFRですね。
ただ、著者たちはそこに疑問を持っていました。
過去の研究を見ると、一般的な低ケイデンストレーニングは、実際にはそこまで高い筋力発揮になっていない可能性があったんです。
(最近では、これは結構一般的な見解になっていますね)
論文中では、従来の低ケイデンストレーニングでは、脚にかかる力は最大筋力の50%未満かもしれない、と書かれています。
つまり、「重いギアを踏んでいるつもり」でも、本当の意味での高負荷レジスタンストレーニングにはなっていない可能性がある。
そこで今回の研究では、「本当に70%1RM相当の負荷を自転車上で再現できるのか」を試しました。
方法はかなり特殊です。
バイク筋トレ群は、6%坂で停止状態からスタートし、超重いギアを使って、7回だけ全力ペダリングを行いました。
超重いギアとは、53×14、53×13、53×12、53×11あたりです(被験者の筋力に合わせています)。
これは、7回転平均で70%1RM相当になるギアです。
70%1RMというと、ウエイトトレーニングでは15回程度が限界の重量です。
なので、この研究のロードバイクでの高負荷筋トレは、従来のSFRよりももっと高負荷、短時間です。
長時間ゆっくり踏むのではありません。
短時間・超高トルク・全力です。
「自転車版ベーベルスクワット」というべき重さです。
一方、バーベル筋トレ群は、70%1RM相当のフルスクワットを実施しています。
ただし、限界まで追い込んではいません。
論文では、「15回できる重さで7回だけ行った」と書かれています。
つまり、筋肥大目的の限界トレーニングというより、神経系・高出力寄りの設計です。
この2群を10週間比較したところ、結果はかなり興味深いものでした。
まずVO?maxは変化しませんでした。
まあ、これは当たり前と言えば当たり前ですね。
筋トレを入れたからといって、有酸素能力そのものが上がったわけではない。
しかし、筋力は改善しました。
スクワット系指標も、ペダリング筋力も、Wingateパワーも向上しています。
しかも、バイク筋トレ群とバーベル筋トレ群とで、差はほとんどありませんでした。
つまり、バイク筋トレでも、バーベルでのスクワットと同等の効果があった、ということです!
さらに面白いのは筋断面積です。
大腿四頭筋の断面積は、両群で増加しています。
つまり、自転車上の高負荷刺激でも、筋肥大が起きている。
ロードバイク界では、「筋トレすると重くなる」という話がよくありますが、この論文では、体脂肪率や総筋量には大きな変化はありませんでした。
局所的な筋断面積の増加はあったが、極端なバルクアップではない。
競技パフォーマンス向けの筋力向上としては、現実的な変化です。
あと、この研究で地味に重要なのがコントロール群です。
コントロール群は、有酸素トレーニングは続けています。
しかし筋トレだけをやめた。
すると、筋力もWingateパワーも低下しました。
つまり、「乗っていれば筋力は維持できる」というわけではない可能性があります。
そして、やはり、バイク筋トレでもバーベル筋トレでも良いので、高負荷の筋トレは不可欠だということです。
著者らはここから、「シーズン中でも筋トレを維持した方がよい」と述べています。
筋力アップのための高負荷ペダリングトレーニングで重要なのは次の条件です。
これくらい負荷をかけて、やっとスクワット70%1RMに近い筋力刺激になります。
SFRや重めのギアでそれなりの時間走るのとは別物です。